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γ-lactone or δ-lactone ?

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 .2 | 投稿日時 2015/12/6 21:03
MasaTaka 
大学受験用の練習問題の解答に関して、質問します。

問題(の一部)は、
「化合物 IV(前段の問題で、2,3,4,5,6-pentahydroxyhexanoic acid であると分かっています。猶、ここでは、立体異性体を無視します)を少量の酸と加熱すると、分子内脱水反応が起こり、水、化合物 VIII、そして、その他数種類の化合物が得られた。化合物 VIII は、中性で、その分子式は C6H10O6 であった。この化合物の構造式を記せ」です。

扨て、この問題の解説では、「環状構造をもつ場合には、環は、6つの原子からなることを考えると、・・・」生成した化合物 VIII は、δ-ラクトンの 3,4,5-trihydroxy-6-(hydroxymethyl)-oxan-2-one (*) である、と説明しています。

ところが、手元の L. F. Fieser and M. Fieser,”Advanced Organic Chemistry” (Maruzen Asian Edition 2nd ed. 1969) p.575 には、acids of the sugar series から、γ-lactones が容易に生成すると述べられ、化合物 IVからγ-lactone である 5-(1,2-dihydroxyethyl)-3,4-dihydroxyoxolan-2-one (*) の生成する反応式が、図で示されています(反応条件は、不明)。

付いては、化合物 IV (2,3,4,5,6-pentahydroxyhexanoic acid) の分子内脱水反応条件の違いによって、δ- 或はγ- と環状構造が異なると、理解すべきなのでしょうか? 或は、L. F. Fieser and M. Fieserの記述が古く、書き改められるべきなのでしょうか? 或は、主生成物は、5員環構造のγ-lactoneなのでしょうか?

(*) この文章に分子構造式(png 形式)を添える仕方が分かっていないので、分子模型ソフトに表示されるIUPAC名を記しました。
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2015/12/8 12:42
公孫硫 
私はFieserを推します。δ−ラクトンが全く生成しないかといえば、そんなことない(「その他数種類の化合物」の中に含まれる)でしょうから、その「解説」が「間違っている」とまでは言いませんが、主生成物はγ-ラクトンであるというのが「常識」です。

ただ、それが「高校化学の常識か」と聞かれるとどうでしょうね。「高校化学」でこのような環化が登場するのは糖の化学のところです。たとえばブドウ糖が環化(ヘミアセタール化)して、5員環(フラノース型)か6員環(ピラノース型)を作ります。この時、ピラノース型の方が安定で主生成物になります。

問題の化合物はブドウ糖を酸化したもの(グルコン酸)ですね。問題を作った人がどのように考えているのか、その解説を書いた人がどのように考えているのか、私には分かりませんが、ブドウ糖の環化との類推で6員環(δ-ラクトン)ができるのが「当然だ」と考えたのかもしれません。

私は、グルコン酸を脱水した時に実際に5員環と6員環とどちらのラクトンが主生成物になるのか、知りません。ましてや、問題では「立体異性体を無視する」ということですから、具体的にどのような化合物なのか分かりませんので、結果がどうなるのかは類推するしかないわけです。この時、ブドウ糖との類推からは6員環ができると類推されるのでしょうけれども、それはアセタール化で環化した(生成物がヘミアセタールである)からです。また、出発物質がブドウ糖だからです。アセタール化は6員環を形成しやすいのですが、5員環ができるか6員環ができるかは置換基によって違います。6員環を作る場合が多いとはいえ、「アセタール化の場合にはどんな場合でも6員環ができる」と考えることはできません。

一方、環化がラクトン化で起こる場合、一般には6員環よりも5員環の形成が速い(生成物が安定である)ことが知られています(常にそうだとは言いません)。生成物のタイプが違うので、結果も違ってきます。ですから、問題の場合、ブドウ糖の環化からの類推は不適切で、一般的なラクトン化学からの類推の方が適切であると思います。つまり、Fieser推しです。

さて、これが大学入試で出題されたとすると、これは「不適切問題」ということになります。問題を作った人は大学の先生ですから、当然、5員環形成が主となることを知っています。受験生がブドウ糖との類推で6員環の形成を答えると、それは引っ掛けで、5員環形成が正解で、出題者は得意満面ですが、「高校生には答えることはできない」問題だということで大目玉を食らうことになります。あるいは、問題を作った人の化学の力がちょっとアレで、6員環ができると思っていて出題したかもしれません。その場合、試験が終わった後でどこからか指摘を受け、「お前はそんなことも知らなかったのか」ということで大目玉を食らうことになります。まあ、どちらにしても、あまり幸せな話ではありません。

ところが、解説を書いた高校の先生はそんなことは知らないので、「これは良い問題だ」などと思いながら「6員環が形成される」という解説を書くことになり、MasaTakaさんが困惑することになるわけです。

私は「大学受験用の練習問題」というのが何なのか分かりませんが、大学入試で出題されたとは信じられません。もし本当に大学入試で出題されたのなら、そんな大学は受験しない方が良いです。私なら「γ-ラクトンとδ-ラクトンの両方に主生成物となる可能性があるが、それは置換基の立体化学によるので、化合物 VIIIがどちらであるかは解答不能である」を正解にしますがねえ。

 公孫硫
投票数:1 平均点:10.00
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2015/12/8 21:42
ゲスト 
大変詳しい解説、有難う御座います。

|私はFieserを推します。・・・
|主生成物はγ-ラクトンであるというのが「常識」です。

納得しました。

|私 は「大学受験用の練習問題」というのが何なのか分かりませんが、大学入試で
|出題されたとは信じられません。

この問題の出自に付いては、ご容赦下さい。唯、公孫硫さんの指摘通り、大学入試で、実際に、出題されたものでは、ありません。猶、問題の全体像は、次の通りです。

出発物質である化合物 I を水酸化ナトリウムで加水分解して得られる化合物II, III, IVに付いて、段階的に、II(フマル酸)、III((E)-3-methylpent-3-ene-2-ol と (Z)-3-methylpent-3-ene-2-ol)、IV(2,3,4,5,6-pentahydroxyhexanoic acid)、そして、VIII(= IVの6員環ラクトン)の各構造式を推測させ、最後に、Iが、二つのエステル結合によって、III-II-VIIIと繋がった構造式を持つ化合物である事を推理させる問題です。

|問題を作った人がどのように考えているのか、その解説を書いた人がどのように考
|えているのか、

両者に間接的なら連絡可能なので、「IVから得られる主生成物は、δ-ラクトンでは無く、γ-ラクトンである」旨を伝えようと思います。

|私なら「γ-ラクトンとδ-ラクトンの両方に主生成物となる可能性があるが、それ
|は置換基の立体化学によるので、化合物 VIIIがどちらであるかは解答不能である」

これに関連して、もう一つ、質問をさせて下さい。

例の L. F. Fieser and M. Fieserの本のp.942 には、2,3,4,5,6-pentahydroxyhexanoic acid の一つであるL-gluconic acid から、L-gluconolactone と命名されたγ-lactoneの生成する反応式が、図で示されています。

これに対して、手元の分子模型ソフト (MarvinSketch)で、gluconolactone の名称を入力すると、6員環のδ-lactoneが、表示されます。

この謎は、どう解いたら良いのでしょうか?
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2015/12/9 13:59
公孫硫  スタッフ   投稿数: 13
MasaTaka 様

> IVから得られる主生成物は、δ-ラクトンでは無く、γ-ラクトンである

できましたら、「IVから得られる主生成物は、δ-ラクトンでは無く、γ-ラクトンであると期待されるが、(誰にも)分からない。」とお伝えください。

> この謎は

謎というほどのことはありません。L-gluconic acid(これは非天然型なのでD-gluconic acidの方が気持ちが良いのですが、まあ、よいです)から誘導されるラクトンは5種類あります。それぞれ、OHのついている炭素を冠して、α-L-gluconolactone(3員環)、β-L-gluconolactone(4員環)、γ-L-gluconolactone(5員環)、δ-L-gluconolactone(6員環)、ε-L-gluconolactone(7員環)と呼ばれます。Fieserは、ラクトンでは5員環が安定であることを踏まえ(あるいはそのような実験事実を踏まえ)、γ-体を書いたのでしょう。MarvinSketchの方は知りません。そのソフトを作った人が何らかの理由でδ-体をdefaultとして入れているのか、登録された順番なのか、はたまた何らかの命名解析プログラムの出力がそうだったのか、どちらにしても、化学とは関係ない理由でしょう。きちんとしたデータベースでもなく、描画ソフトの出力など信用に値しません。コンピュータはデータを入力した人の能力以上のことはできないのです。ですから、どこにも謎などないのです。

ところで、元の問題ですが、2,3,4,5,6-pentahydroxyhexanoic acidのどれか1つのOHがフマル酸でアシル化されているんですか? いやー、非常に作りにくいし、その化合物は不安定でしょう。いかにも受験用の問題(現実感が無い)という感じですね。

 公孫硫
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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2015/12/9 22:32
MasaTaka 
公孫硫 様

更なる質問に対する返答、有難う御座います。

伝言の件、承知しました。それから、gluconolactone は、一般名(総称)であるとの理解で、良い様ですね。

|ところで、元の問題ですが、2,3,4,5,6- pentahydroxyhexanoic acidのどれか1つ
|のOHがフマル酸でアシル化されているんですか? いやー、非常に作りにくいし、
|その化合物は不安定でしょう。

問題初めに、化合物 I は、ヒドロキシ基の結合した炭素原子が、2個隣接した構造は持たないと断りがあり、その条件の下で、その構造式は、次の様に示されています。

OH
|
CH3 CH―C=O
| ╱ ╲
CH3―CH=C―CH―O―C―CH=CH―C―O―CH O
| ‖ ‖ ╲ ╱
CH3 O O CH―CH
| |
OH CH2OH

残念ながら、プレビューで、各原子の位置が揃わず、正しく表示されていないので、言葉で表現すると、δ-ラクトンのC4でフマル酸とエステル結合しています。

|いかにも受験用の問題 (現実感が無い)という感じですね。

他の問題にも当てはまる様です。
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