化学の広場ホームページ>過去の話題>日常>ウイルスと消毒


(304) 消毒はウィルスに有効でしょうか。
ptt
2003/05/20(火) 20:55

こんばんは。ptt(ピーティーティ)といいます。

SARSに関係して,大阪で自動改札機などの消毒をしている様子をニュースで見ました。このような消毒はウィルスに対して有効なのでしょうか?


およそ一週間前,やはりSARSに関係して,NHKの子供向けの番組で,細菌とウィルスについて,体内での増え方の違いを説明されていました。
私の記憶しているのは,ウィルスのほうが小さいことと,ウィルスはヒトの細胞内に入り込んでその中で増えることです。

疑問1 ウィルスは自動改札機の表面に,生きたまま(増える力を持ったまま)存在するのでしょうか?

疑問2 一般に,消毒とはウィルスにも有効なのでしょうか?

宜しくお願いします。



(305) (Re:304)
Re:消毒はウィルスに有効でしょうか。
鶴千亀万
2003/05/21(水) 16:52

こんにちわ、pttさん。
回答ではないのですが、この件に関連して私も分からない事が有るので、セットで質問させて下さい。

消毒剤(薬)にも色々種類が有って、このような場合にはエチルアルコ−ル(たぶん98−99%以上の濃度)が使われるのが一般的と聞いたことが有ります。 ところで、エチルアルコ−ルと言えば(毎晩)飲むお酒の主成分です。 これがどのようなメカニズムで細菌やウイルスを退治してくれるのか? また、それなのに、なぜ飲んでも問題無いのか? どなたか教えて下さい。お願いします。


(308) (Re:305)
Re2: 消毒はウィルスに有効でしょうか。
チビマル
2003/05/21(水) 17:33

 鶴千亀万 さん,こんにちは。

| エチルアルコ−ルと言えば(毎晩)飲むお酒の主成分です。 これがどのようなメカニズムで細菌やウイルスを退治してくれるのか? また、それなのに、なぜ飲んでも問題無いのか?

 簡単に言いますと,濃度の問題です。薄いか濃いかで,エタノールは毒性がかなり違うのです。お酒だと,薄いワインとかビールで3〜4%,濃い焼酎とかウォッカだと30%を越えてたりします。

 薄い濃度のお酒を飲む分には,あまり大量に飲んだり,毎日呑み続けていたりしない限りは害毒はありません。ただし,大量のお酒を毎日呑み続けていたりすると,肝臓がやられて,精神科でアルコーリズムと呼ばれている慢性的なアルコール依存症となってしまいます。いわゆる「酒ぐせが悪い」のもアルコーリズムの一種で,こういうのは内科よりも精神科の治療の対象となる病気です。だから,度を越すと,やはりエタノールは害毒があるとも言えるでしょう。要するに,呑み方の問題だと思います。

 ところが,ここで問題にされているのは,消毒用エタノールです。手許にある日本薬局方「消毒用エタノール」には,濃度が 76.9〜81.4%と書いてあります。これは非常に濃度が高いです。実際,舌の上に載せただけで,焼けたような感じになります。なぜならば,エタノールが舌の細胞の表面のタンパク質を凝固させ,傷つけたからなのです。看護師さんの指先が荒れているのも,消毒用脱脂綿に含ませた高濃度のエタノールが,指先の皮膚の表面の細胞を傷つけているせいです。これと同じことが細菌やウイルスに対しても起こっていると考えれば,高濃度のエタノールの有害性がお分かりになるのでは? 難しい理屈はあえて書きませんでしたけれど,だいたいこういった仕組みだと納得されれば幸いです。(^_^)/


(311) (Re:308)
Re3: 消毒はウィルスに有効でしょうか。
鶴千亀万
2003/05/22(木) 13:14

チビマルさん、

> 簡単に言いますと,濃度の問題です。薄いか濃いかで,エタノールは毒性がかなり違うのです。

明快なご説明を有難うございます。

本題からはそれますが、今までお酒の体に対する有害性は「濃度に関係無く一定時間に摂取したアルコールの総量に依存する。」と信じておりましたが、「もし総量が同じなら、薄い酒を飲んだほうが無難。」ということも分かりました。出来る(?)限り今後に役立たせていただきます。


(312) (Re:311)
Re4: アルコール中毒の話(^^;)
チビマル
2003/05/22(木) 17:28

 鶴千亀万 さん,こんにちは。チビマル@今日から入院中です。(^^;)

| 今までお酒の体に対する有害性は「濃度に関係無く一定時間に摂取したアルコールの総量に依存する。」と信じておりましたが、

 うーん。この辺は結局,エタノールをアセトアルデヒドに,アセトアルデヒドを酢酸にと酸化していく,肝臓内の酵素の量に人種差や個人差があるから一般論は無理だ,ということになってしまうんですよ。紅毛碧眼の毛唐からもたらされた高濃度のアルコール飲料によって,社会的に転落して行った「原住民」の例もあまたありますし。(^^;)

# 旧ソ連や北朝鮮で蒸留酒の価格が安すぎるのも,社会の荒廃を招く一因となっていたのではないかと邪推しております。


 日本人も基本的に混血民族ですから,県民性に近い感じで,エタノール酸化酵素の多寡があることは,公衆衛生学のテキストなんかに良く紹介されていたりします。私も若い頃はかなり酒が強い方で(つまり肝臓にエタノール酸化酵素が非常に多い),南極帰りの教授と呑み比べをした経験があったり。その代わり,ツケは30代に入ってすぐやって来ました(自爆) それからの十年間は病院との往復生活になってしまっています。


| 「もし総量が同じなら、薄い酒を飲んだほうが無難。」ということも分かりました。

 その代わり,薄い酒でも量を飲んだらだめですよ。大学の新歓コンパみたいに,ビールをアルミ樽1樽(昔の感覚で言うと1ケース)飲ませるなんて無茶は,絶対にやってはいけません。キリスト教のミサのブドウ酒の儀式のごとく,ちびちびと無理せずに。(^_^)

# 急性アルコール中毒の問題と,慢性的アルコール依存症の問題とは,切り離して考えるべきだ,というのが基本的な私のスタンスです。この辺は誤解されませんように。



(313) (Re:312)
Re5: アルコール中毒の話(^^;)
鶴千亀万
2003/05/23(金) 10:47

えっ! いきもの係りのチビマルさん、入院中ですか。もちろん人間用の病院でしょうね。(失礼!)
にもかかわらず、解説を有難うございます。

># 急性アルコール中毒の問題と,慢性的アルコール依存症の問題とは,切り離して考えるべきだ,というのが基本的な私のスタンスです。この辺は誤解されませんように。

で、今回はどちらの問題でご入院なのでしょうか。(またまた失礼!)
いずれにしても、早期の全快・ご退院を祈念申し上げます。



(314) (Re:311)
Re4: アルコールは昆虫も大好き
チビマル
2003/05/23(金) 11:02

 鶴千亀万 さん,こんにちは。昨日の追伸です。

| 「もし総量が同じなら、薄い酒を飲んだほうが無難。」

 この件ですけど,自然界にもエタノールは存在しています。例えば夏になると,カブトムシとかクワガタやカナブンなどの甲虫が樹木の樹液に集まってますよね。クヌギだと樹液に占める糖分は約20%,タンパク質は 1.5%,さらに醗酵で生成したエタノールまで含まれていて,昆虫たちにはうれしいごちそうになります。

 この樹液に集まる昆虫の中に,ハエやハチを見掛けたこともあるでしょう。実はショウジョウバエとかスズメバチは,エタノールが大好物なのです。ショウジョウバエの猩々ということばは元々,酩酊したお酒の神さまという意味です。秋のお彼岸に墓参りをすると,墓石に供えられたワンカップのお酒の中に多くの昆虫が沈んでいるのを見掛けるかも知れません。人間には害虫となるスズメバチは特にエタノールが大好物で,スズメバチの巣が墓場の近くにあると,お酒が入った容器の中にたくさんのスズメバチが沈んでいることが見受けられます。これを逆手に取って,家屋にスズメバチが巣を作って困っている場合,業者に委託する前に,スズメバチの巣の近くに日本酒を注いだプラスチックのどんぶりをたくさん並べておいて,越冬のじゃまをするという手もあります。(^^;)



(315) (Re:314)
Re5: アルコールは昆虫も大好き
チビマル
2003/05/23(金) 17:38

 鶴千亀万 さん,こんにちは。午前中の追伸です。

| ショウジョウバエの猩々ということばは元々,酩酊したお酒の神さまという意味です。

 化学とはかなりずれた雑談になってしまいましたけれど,ちょっと補足です。以前,私が住んでいた名古屋市では,このようなお祭りが行われています。とりあえず参考になればと。http://www.tctvnet.ne.jp/~tatami/syoujyo-kan.htm


(316) (Re:314)
Re5: アルコールは昆虫も大好き
イルカ
2003/05/23(金) 19:27

イルカです。
実はショウジョウバエとかスズメバチは,エタノールが大好物なのです。ショウジョウバエの猩々ということばは元々,酩酊したお酒の神さまという意味です。
 名前の由来はお酒がすきというのではなく、目が赤いからだったと思います。
 猩猩は赤ら顔で目も体も赤いので、ショウジョウバエ、ショウジョウトンボ・・・
 ショウジョウバエは熟れすぎた果物にたかるハエですから、お酒もアルコール発酵した果物と間違うのでしょう。


                 イルカ


(307) (Re:304)
Re: 消毒はウィルスに有効でしょうか。
チビマル
2003/05/21(水) 17:33

 ptt さん,こんにちは。お世話係のチビマル@いきもの係です。

| SARSに関係して,大阪で自動改札機などの消毒をしている様子をニュースで見ました。このような消毒はウィルスに対して有効なのでしょうか?

 基本的にコロナウイルスですので,エタノールやイソプロピルアルコールに対する殺菌効果は期待できると思います。

# 手許にある日本薬局方「消毒用エタノール」の青いプラ瓶の注意書きには「本剤は,使用濃度において栄養型細菌(グラム陽性菌,グラム陰性菌),酵母菌,ウイルス等には有効であるが,芽胞(炭疽菌,破傷風菌等)及び一部のウイルスに対する殺菌効果は期待できない。」と書いてあります。従って,エタノールで殺菌できないウイルスの場合は,イソプロピルアルコールなど,他の消毒薬を用いるのが慣例になっています。


| 疑問1 ウィルスは自動改札機の表面に,生きたまま(増える力を持ったまま)存在するのでしょうか?

 ウイルスというのは遺伝子とそれをとりまくタンパク質の殻だけに退化してしまった生物の一種です。だから,このタンパク質の殻が変質したりすれば,増殖する力は衰えてしまいます。よく SARS と呼ばれているコロナウイルスが,体外に出て何日間すれば死んでしまうとかいう表現をマスメディアで聞かれると思いますけれど,これは結局ウイルスの殻が環境の中で変質するのにかかる時間だと理解されると良いかと思います。

 基本的に SARS ウイルスは飛沫感染で空気感染ではありません。つまり体液という環境がなければ,ウイルスの殻であるタンパク質は結構簡単に変質して壊れてしまうということになります。そうなれば,せきをしたりして,飛沫でウイルスがくっついた改札機などの表面を消毒液でなでて,タンパク質の殻が壊れれば,SARS ウイルスは感染力を失うということになります。

 ただ,一般のかぜなどのウイルスと同様,外出したあとの手洗い・うがいなどの習慣は実行しておいて損はないでしょう。疑問2の方は最初に説明した内容で宜しいでしょうか。(^^;)

# 呼吸器内科が専門の人がおられたら,追加情報を書かれて頂くと幸いです。

P.S. #306 はミスがあったので,削除して訂正させて頂きました。


(309) (Re:307)
Re2:消毒はウィルスに有効でしょうか。
ptt
2003/05/21(水) 20:51

チビマルさん,ご回答をありがとうございました。

そのNHKの望遠鏡のくっついたブタの出てくる番組を見て
ウィルスのほうが細菌よりも怖い印象があって,質問させ
て頂きました。
昼間,ふとしたことから厚生労働省のホームページを見る
ことを思いつきました。
ウィルスに対して消毒が有効なことを,そこでも確認でき
ました。
http://idsc.nih.go.jp/others/urgent/desinfect03b.html

体外に出たウィルスが何日間で死ぬか,という表現は,ま
だ耳にしたことがないように思います。
夕方のニュースで“10日を過ぎたので(京都などで宿泊
施設が営業を再開した)”というのは聞きました。でも,
それはヒトの体内にウィルスが入ってから発症するまでの
期間のことかなと推察します。

大阪のニュースにこだわりますと,そうするとトイレなど
ではもしかしたら体液と一緒にウィルスが生き残っている
おそれがあるので,消毒したい気持ちは理解できます。で
も,自動改札機については,体液が付着するおそれは少な
いし,付着しても少量ですぐに乾燥しそうだし,日数も経
過していることから,科学的には無駄な作業ではなかった
かと感じます。

それから鶴千亀万さんへのご回答,私も興味を持って読ま
せて頂きました。いろいろ教えて頂いてありがとうござい
ました。



(310) (Re:309)
Re3: 消毒はウィルスに有効でしょうか。
チビマル
2003/05/21(水) 22:03

 ptt さん,こんにちは。一般の方に専門的なことを説明するのは結構難しいです。(^^;) ただ,少しでも分かって頂けるように説明すると,こちらの勉強にもなります。


| ウィルスのほうが細菌よりも怖い印象があって,質問させて頂きました。

 なるほど,「週刊こどもニュース」ですね。(^o^) あの番組は限られた時間と材料の中で,何とかして正確にかつ誤解を受けないように説明していて,見ていてはらはらさせられることがあります。


| ウィルスに対して消毒が有効なことを,そこでも確認できました。 http://idsc.nih.go.jp/others/urgent/desinfect03b.html

 この Webページにリンクされてる,http://idsc.nih.go.jp/others/urgent/desinfect02.html の中にある「粘膜面には使用できない。アルコール系消毒剤として、イソプロバノール(70%)が使用されることもあるが、ウイルスに対する効果はエタノールより劣っている。」は,イソプロピルアルコール(イソプロパノール)の入力ミスですね。イソプロパノールはOA機器やAV機器のメンテナンスの時に,綿棒やウエス(雑巾)に染み込ませて使う洗浄液としても使います。

# イソプロピルアルコールとイソプロパノールはどっちが正しい表現か,という雑談はまたいずれ。(^^;)


| 体外に出たウィルスが何日間で死ぬか,という表現は,まだ耳にしたことがないように思います。

 そうですね。ウイルスが死ぬ,というのは理屈の上ではありえませんからね。物質にまで退化した生物ですから,正確には「増殖できなくなる」というのが誤解を受けにくい表現でしょう。


| 自動改札機については,体液が付着するおそれは少ないし,付着しても少量ですぐに乾燥しそうだし,日数も経過していることから,科学的には無駄な作業ではなかったかと感じます。

 確かにそれも一理はありますけれど,今回の事件のようにウイルスを持った患者がつばを撒き散らしながら歩き回っていて,突然発熱して病気が分かるということがありますから,必ずしも無駄とは言い切れないとは思いますよ。それとパフォーマンスとしてでも,安全宣言をする上では,やはり必要な作業ではあるかと。(^^;)

 ついでに,エタノールやイソプロパノールで壊れないようなしぶとい小型ウイルスや HBV ウイルスや HCV ウイルスには,グルタラール(商品名グルトハイド,サイデックスなど)やフタラール(商品名ディスオーパ)などのアルデヒド系消毒薬を用います。但し,非常に強力な薬品ですので,素手で取り扱うと皮膚を侵されますけれど。



(317) (Re:310)
Re4: 消毒はウィルスに有効でしょうか。
シェーマ
2003/05/24(土) 16:39

| 体外に出たウィルスが何日間で死ぬか,という表現は,まだ耳にしたことがないように思います。

に少し関連した情報としては,

・WHO研究施設ネットワークが集積したSARSコロナウイルスの安定性と抵抗性に関する最初のデータ(改訂5月15日)
 http://idsc.nih.go.jp/others/urgent/update56-data.html
   ※WHO原報
    http://www.who.int/csr/sars/survival_2003_05_04/en/

がありますね。

 なおニュースが出て以来,私のサイトでも以下のページを公開していますが,PDBにSARSに関係する最新情報がすぐに掲載されるなど,いろいろ目の離せない状況です。

・SARSと抗ウイルス薬
  http://www.ecosci.jp/chem11/sars_avd.html
   ※分子表示用プラグイン要求は無視してください。


     === シェーマ/本間善夫(GEH05313) ===
   → 生活環境化学の部屋: http://www.ecosci.jp/ ←





Copyright© 2005 FCHEM All rights reserved.