(1459)
「溶ける」という事について
tenshi
2004年09月17日(金) 23時21分
こんばんは。
高校理科の新米教員tenshiと申します。
お知恵を拝借いたしたく質問させて頂きます。
塩基が「触るとぬるぬるする」と言う事が教科書に書いてありました。
これは皮膚が溶けるという事だと思うのですが、まず
「溶けるという事」は科学的にどのような事を言うのでしょうか?
あと、酸も皮膚を溶かすと思うのですが、それはどのような作用によって「溶かす」のでしょうか?
アバウトな質問でごめんなさい。
お知恵をお貸しください。
(1466)
(Re:1459)
Re:「溶ける」という事について
IRON28
2004年09月18日(土) 14時56分
#1459 tenshiさんこんにちは
>まず「溶けるという事」は科学的にどのような事を言うのでしょうか?
「溶ける」とは特定の科学的プロセスを意味する言葉ではなく、単にモノ
(大抵は固体、まれに気体)が液体中で解体されて見えなくなる現象をさす
一般的な言葉のはずです(広辞苑などにどう書いてあるか見ておりませんが)。
従って、科学的意味合いを持たせるのは「○○がXXに溶けるということは
どのような事をいうのでしょう」というぐわいに溶けるもの○と溶かすもの
Xを指定しなければなりません。
「食塩が水に溶ける」とはいわゆるイオン結合が切れてNa+とCL-の水和
イオンになって水の中に拡散してしまい、食塩の姿が消えることであり、「
亜鉛が希硫酸に溶ける」とはZn+H2SO4=ZnSO4+H2の反応が起きて亜鉛金属の
姿がなくなることです。三酸化イオウ(気体)を水に溶かすとはSO3+H2O=
H2SO4の反応が起きて硫酸ができ、SO3がなくなることです。
>塩基が「触るとぬるぬるする」と言う事が教科書に書いてありました。
>これは皮膚が溶けるという事だと思うのですが、
塩基が水酸化ナトリウム水溶液のようにOH?イオンを持つものなら、タン
パク質のOH?による加水分解が起きているのだと思います。
>あと、酸も皮膚を溶かすと思うのですが、それはどのような作用によって
酸が皮膚を溶かすとは聞いたことないし、私は中学生の時、塩酸、希硫酸に
なんども指つっこみましたが、「溶けた」という実感をもったことはありま
せん。ただ、それは短時間だったからであり、長時間浸しておくとやはり
溶ける可能性はあると思います。というのはタンパク質は酸でも加水分解
するからです。
発煙硝酸が漏れて指に触れると褐色の気体がでて、まさに指が溶けますが
(小孔があいて肉が露出したことがあります)、これはキサントプロティン
反応というやつでタンパク質がやられる反応です。あと指が真黄色になり
何日も取れなくなります。ただ、私はこの「やられる」の中身は知りません。
濃硫酸に指つっこむと次第に熱くなりますが、これは脱水反応が起きて
タンパク質も含め生体組織が破壊されつつある状態だと思います。もっと
も、これやった時すぐ水道水で指を洗いましたから、とことんやるとどう
なるかは見ておりませんが(^^;)
(1486)
(Re:1466)
Re2:「溶ける」という事について
tenshi
2004年09月23日(木) 18時20分
IRON028さん、ありがとうございました。
加水分解なんですね。
下記のような反応でしょうか?
R-CH(NH2)COOH + OH- → R-CH(NH2)COO- + H2O
でもこれって加水分解って言いますか?
>発煙硝酸が漏れて指に触れると、濃硫酸に指つっこむと
体当たりな実験者魂に大変感銘を受けました(^_^)
(1492)
(Re:1486)
Re3:「溶ける」という事について
IRON28
2004年09月24日(金) 20時35分
#1486 tenshiさん
>R-CH(NH2)COOH + OH- → R-CH(NH2)COO- + H2O
>でもこれって加水分解って言いますか?
いえ、この反応ではないのです。ペプチド結合の炭素、つまり今の場合R-CHの
CにOH-が付くところから始まってカルボン酸とアミノ酸に分解する反応です。
酸加水分解の場合にはC=OのOにH+がつくところから始まります。このプロトン
付加によってCがより正電荷帯び、H2OのOの攻撃を受けるようになります。
ここをみて下さい。
http://www.kiriya-chem.co.jp/q&a/q53.html
>>発煙硝酸が漏れて指に触れると、濃硫酸に指つっこむと
> 体当たりな実験者魂に大変感銘を受けました(^_^)
いやー、これはどうも。しかし、発煙硝酸にせよ濃硫酸の件(「理科」の
#7007参照)にせよ、試薬がうっかり手についたところから始まったわけで
まあ、あまり体当たりでもないわけでして・・・(^^;。
(1498)
(Re:1492)
Re4:「溶ける」という事について
tenshi
2004年09月27日(月) 22時50分
IRON28さん
コメントありがとうございます。
酸の加水分解については理解できました。
プロトンの攻撃するヤツは大学でやった気がします。
ありがとうございます。
しかし
>ペプチド結合の炭素、つまり今の場合R-CHのCにOH-が付くところから始まってカルボン酸とアミノ酸に分解する反応です。
ここが理解できません。
なぜ「R-CHのCにOH-が付く」とカルボン酸とアミノ酸になるのでしょう??
すみません。お教えくださいm(_ _)m
(1499)
(Re:1498)
塩基加水分解
IRON28
2004年09月28日(火) 20時53分
#1498 tenshiさん
>ここが理解できません。
>なぜ「R-CHのCにOH-が付く」とカルボン酸とアミノ酸になるのでしょう??
私が紹介したホームページをもう一度見たら意外にもアルカリ加水分解機構は
書かれていないですね(^^;。もし、エステルの加水分解機構と同様なら以下の
ような機構になります。
ポイントは「C=O結合を持つ炭素はアルデヒドにしろエステル基にしろ、かな
りの正電荷を帯びている(酸素の大きな電気陰性度のために)」ということで
す。だから負電荷を持つOH-の攻撃(いわゆる求核攻撃)を受けやすいわけです。
R-CO-O-R'+OH- =[R-CO(OH)-O-R']- (1)
[R-CO(OH)-O-R']- = R-COOH +OR- (2)
OR- + H2O = OH-R +OH- (3)
(1)ではCOのOの部分が形式的に?1の電荷を持ちます。このC-O-結合が(2)で
C=O二重結合になります(有機化学の教科書では矢印が書いてありますね)。
と、同時にO-Rが負イオンとして脱離します。それが(3)でH2Oと反応してアル
コールができ、OH-が再生されます。タンパク質の場合はOR-に当たるものは
NHR-です。で、NHR-+H2O = NH2-R + OH-
(1520)
(Re:1499)
Re6:塩基加水分解
tenshi
2004年10月05日(火) 22時57分
IRON28さん
アリガトウございました。
なるほどなるほど。
理解できました。
最後までおつきあい頂きアリガトウございました。
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